東日本大震災が起きたあの日。
私の住んでいる地域でもそれなりの揺れを感じ、
母・私・弟の三人でリビングに集まって
緊急地震速報や東北のひどい
惨状をテレビで見ていた。
ふと、母が私たちから少し離れたところで、
携帯で誰かに電話しているのがわかった。
最初は父に
連絡を取っているものだと思っていたのだが、
口調や態度から察するに、
明らかに父ではない誰かと話している。
さらに、母は携帯の受話音量を
最大にする癖があったので、
電話口からは父ではない男性の声が
漏れ聞こえていた。
その時点で私は嫌な予感を感じていた
(後で聞けば弟もこの時点で
「ん?」と思っていたらしい)。
その日の夜、両親が寝静まってから
母の携帯の発着信履歴・
送受信メールの内容をすべて改めた。
完全に油断していたのか、
それともバレるわけがないと
舐めていたのか、携帯にはパスがかかっておらず、
どうぞ見てくださいと言わんばかり。
結果は真っ黒。様々な愛の言葉が囁かれた文面や、
中には過激な内容のものまで、
メールからありとあらゆる証拠が見つかった。
まさか震災がきっかけで
母の浮気が発覚するなんてね。
なんとも言えない気持ちになったよ。
さすがに相手の名前を本名では登録しておらず、
「Sweet.○○」という風に登録されており、
本名はわからずじまい。
しかし、メールの内容や時間帯から推測した結果、
当時両親が通っていたスポーツジムの
常連客ではないか? という結論に辿り着いた。
義父と一緒に通っているスポーツジムで、
あろうことかそこで見つけた相手と浮気をし、
震災の日に真っ先に安否の確認をしたのが、
義父でなく浮気相手だったという事実に、
母の人間性を心の底から軽蔑した。
義父には多大なる恩を感じていたので、
母が義父を裏切ったということに
一睡もできず悩み苦しんだ。
受験を控えている弟にこの事実を
言うべきかどうか悩んだが、
私の異変を悟られてしまい、
本人が「どうしても聞きたい。
聞かない方が気になってしまって
受験に集中できないから」
と懇願されたので、
ぽつぽつと母が浮気していること、
浮気相手のことなどを包み隠さず話した。