4年前に妻と離婚した。理由は相手の浮気。
それまで倦怠期と言うものもなく、
仲良くやって来たつもりだった。
発覚は奇妙にも「勘」だった。俺の。
友人にも相談した。
やはり思い違いだと言う人ばかりだった。
しかし、一人だけ高校以来の友人だけが
「調べてみたら?」と。
自分は何か心理面での問題じゃ無いのかなと感じていたし、
5年目でも夕食を作り家で待っていてくれ、
朝も帰りも出迎えてくれた、
そんな嫁がそんな筈は無いと言った。
ただ彼の目が据わっていたので、じゃあと、
興信所を使った。黒だった。
結果を受け取った時、泣いてしまった。
恩着せがましく聞こえるかもしれないが、結婚以来、
家庭を持ったのだからかくあるべきだと
言うのを自分に課していた。
飲み会も極力断り、家事も協力し、
休日は妻との時間を持ったつもりだった。
(子供はいなかった)記念日にはしょうもないものだが、
何かは送るようにしたし、可能な限り労ったつもりだった。
医師と言う職業柄、夜も拘束されてしまうことも
多かったがその分、色々な面で尽力したつもりだった。
そんな自分を責めた。何がいけなかったのかと。
その週の末に妻に打ち明けた。全て知っていると。
と同時に、今後どうしたいかも尋ねた。
ルール無視してるなら教えてください。
新参者故に不躾なところもあると思います。
妻には謝られた、そして離婚して欲しいと言われた。
俺も分かったと言った。納得したつもりだった。
それでも離婚届に書く時は手が震えていた。
手で手を押さえながら書いた。相手の事も調べた。
年収とかに不安もなさそうだっので、そのまま、
財産分与もして離婚した。
両方の親には、性格の不一致とした。
そのあと、俺は職を辞めた。心情の安定しない状態では
務まらないから。上司の取り計らいで、
研究所に再就職することになった。
そこでなんとか再スタートを切った。一時期、
175センチで52キロしかなかった体重も、60キロまで戻った。
そこで、人間関係もうまく行き、4年が経った。
先週の水曜日だった。
ふと、肉が食べたいなと思ってファミレスに寄った。
席について、オーダーを取ろうとした時だった、
えっと言う声がした。
横に座っていたのは元妻だった。
あの時と変わらなかった。元から美人だったが、
幾分綺麗になった気もした。
結婚して5年、別れて4年で30代前半とは見えない位に。
そして横には子供がいた。元妻に似て可愛い子だった。
あちらはうつむいていた。そこからは覚えていない。
気が付くと家で泣いていた。そして朝だった。
職場に電話して、週末まで休ませて欲しいと言った。
理由を話すと分かってもらえた。
そして、その週末。恐らく4年前よりもずっと落ち込んでる。
恐らく心の何処かで戻って来てくれると思っていたんだろう。
その支えが外れてしまったのだ。
俺はどうすればよかったのか。
そしてどうしてはいけなかったのか。
昨日の明け方、その時僕の様子を見兼ねてなのか、
彼女の後夫、つまり彼ですね、から電話がきた。
望むならば女性を紹介しましょうか、と(ニュアンス的には)。
唯、気遣いは無用です、妻と子供に
その分気を回してやってくださいと言った。
更に、子供に会いたいか…とも。
そのような資格は無いので、お断りします。
と言い、電話は終わった。
確かに子供を抱き上げ、川の字になって寝て、
泣くのをあやし、子供の物も買い、
そして成長を見守りたかった。
しかし、あの子供は、かつて妻で有った人間の子供で有り、
僕の血は流れていない。そのような資格も権利も当然ない。。
普通の人間なら、こんな電話を貰えば激昂するのだろう。
しかし、そんな感情も失ってしまったようだった。
その代わりに又、泣いてしまった。
受話器を置くのを待たずに。
そして、何年ぶりだろうか、孤独の辛さを味わった。
離婚以来、何年ぶりだろう、こう言った事で泣くのは。
唯、かつてのどの時よりも、苦味が強いものだった。
そして、泣き終えると何だか吹っ切れた気がした。
上に書いたように吹っ切れたのか、それとも唯壊れたのか。
それは僕自身分からない。
「愛のコメント」
どうして元奥さんは間男の方に行ってしまったのですか?