「この子のファンになろう」
つき合いたいとか、ましてや結婚したいとかはまったく考えなかった。
とにかくその日を境にアイドルの追っかけはやめた。
以来、一度もアキバには行ってないw
知り合い女性に頼み込んで嫁を紹介してもらった。
1か月かかった。
ようやく紹介してもらえた嫁に俺は言った。
「君は今日から俺のアイドルです、ファンになります」
嫁は別に拒否もしなかった。
最初のころは二人で会うことはできなかった。
嫁は必ず友人(以下、嫁友)を連れてきた。
初めて嫁に買ったプレゼントは香水だ。
化粧品屋のショーウインドーを見つめる嫁を見て、嫁友はこう言った。
「嫁ちゃんにあの香水買ってあげて。
俺さんの好感度がぐっと上がるから」
買ってやったらその通りで、涙流して喜んでくれた。
その香水瓶は今でもある。
やがて二人で会えるようになったが、つき合うのはおよそ不可能な状況だった。
何しろ嫁は、つき合う男性の年齢上限は2コ上までと決めている。
しかも、現につき合ってる彼氏がいるのだ。
その彼氏というのが、親同士が知り合いで、結婚も視野に入れているらしい。
あまりに強敵すぎる。
さらに言えば、嫁はモテるので、彼氏候補が順番待ちしてる状態だ。
とても俺のようなおっさんが入り込む余地はない。
よく、俺は金持ちではないかと言われるのだが、とんでもない。
ビンボなサラリーマンだし、背は低いしイケてもない。
モテる要素は何もないから勝ち目などないと思ってた。
嫁のファンでいい、と
嫁は中学3年になった。
そのころ嫁は彼氏と別れ、そして恋愛の年齢制限もなくなった。
別れた理由は、彼氏が浮気してほかの女の子を妊娠させてしまったから。
年齢制限がなくなったのは、嫁友にこう言われたかららしい。
「彼氏は年上の方が便利だよ、車があるから」
中学の卒業が近づいたころ、俺はようやく彼氏になることができた。
彼氏になったわずか2日後、早くも運命の時はやってきた。
その日は俺と嫁と嫁友の3人で遊びに出かけた。
帰り道、嫁友が突然こんなことを言い出した。