下話含みます
学生の頃、ゼミの先輩にキモメンな上に太ってて寡黙で周りから遠巻きにされてる人がいた
片山のゆうちゃんに似てたので片山さんとする
ゼミの合宿の係が一緒になったので話すようになったんだけど、
話してみると意外とユーモアがあって聡い人だった
思いやりがあって気が利く優しい人だと思った
私は歴史小説と70年代～80年代洋ロックが大好きなんだけど、
たまたま片山さんもドンピシャで同じ趣味で、本やCDの貸し借りをしたりして仲良くなった
洋バンドの来日コンサートにも一緒に行ったし、お互いに美味しいもの食べるのが好きだったからグルメ巡りもしたし、
仏教展に行って薬師如来について語り合ったりもした
一緒にお酒を飲みに行った帰り、片山さんに好きですと言われた
私もですと答え、付き合うようになった
私はどちらかというと活発で社交的なタイプだったので、
片山さんと付き合い始めたことが周りに伝わると初めは驚愕された
でも私と付き合い始めてから片山さんは他の人に対しても素の面を見せるようになり
そうすると段々と周りの人も片山さんに好意的になっていって、
いつしか幸せそうな良いカップルと言われるようになった
片山さんと一緒にいると落ち着いたし心が温かくなって幸せだなぁと思えた
片山さんは普段は寡黙に見えるけれども成績も良かったし
面接や発表といったいざというときにはそれはもう別人のように雄弁に話すので、
第一希望の就職先にあっという間に決まった
その辺りで私を両親に紹介したいと言われ、私が大学を卒業して落ち着いたら結婚してほしいと言われた
私はその場の流れで、はい、と答えてしまった
でも、付き合い始めたときから本当は
「付き合うだけなら大好きだし幸せだとも思う」
「でも、この人と子供を作って
この人と同じ顔の子供を産むのは
どうしても生理的に無理だ」
と思っていた
片山さんとの行為はあったし、終わったあとは足腰立たなくなるくらい良かったんだけど
それでもやっぱりこの人との子供が欲しいとは露ほども思えなかった
でも子供は好きだし複数人産みたいとは思っていたから、
片山さんと結婚して選択小梨にしようとも思えなかった
だけども片山さんの顔の子供を産みたくないから結婚したくないなんて言えないし、
でも他に別れる理由になるようなことなんて見事に何にもないから悩みに悩んだ
そういう私の様子に片山さんも気付いて、
何を悩んでるのかと優しく根気強く聞いてくれて、何だか泣けてきてしまった
どうしてこの人はせめて、フツメンレベルの顔で産まれてきてくれなかったんだろう
そして結局片山さんに一つずつ紐解かれるような感じで、思っていることを聞き出されてしまった
片山さんは最初は絶句していたけど、
ぽつりと
「そうだよね、こんな顔だもんね」
と独り言のように言って
「私ちゃんがそんなに辛いなら別れよう」
と言った
片山さんは別れた理由を誰にも言わなかったし、私を責めたり悪く言ったりもしなかった
私は気まずかったし、同じ都内にいるのが申し訳なくて結局遠方の地元にUターン就職した
それからすぐ、片山さんが仕事を辞めて自殺したとゼミで同じだった人から聞いた
片山さんの親御さんから「理由を知らないか」という電話も来たけど、心当たりがないと答えた
本当は私が片山さんを殺したみたいなものだけど
誰も知らないしリアルで誰かに言うことも決してない
いつかバチが当たるだろうとか、死んだら地獄行きかなとかは考える
だけども、現在は就職してから知り合った結構顔が整ってて性格も良い人と結婚して子供も複数いるけど、
子供達の可愛い笑顔や寝顔を見てると
情に負けて片山さんと結婚しなくて良かったとやっぱり思ってしまう
「愛のコメント」
顔にこだわりがあるのなら仕方ないですかね．．．
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