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修羅場

祖母が亡くなる間際「雪は降ってるか」と聞かれ「降っている」と嘘をついた。祖母は安らかに息を引き取ったが母の態度が急変した

投稿日:2024年5月17日 更新日:

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幼い頃寝たきりの父方の祖母と同居していた。当時は老人の介護は嫁がやるのが当たり前な時代、当然介護や世話は殆ど母一人。私も手伝いはしたが、当時4歳の幼児では出来る事は限られていて、せいぜい食事を祖母の部屋に運ぶ事と食べ終わった食器を下げて来る事と祖母の体拭くのを手伝う程度。父や叔父叔母は何もしなかった。

祖母は時々私や母に季節関係なく「雪は降ってるか?」と聞いてきた。私達が「降ってない」と答えると祖母は悲しそうな顔して目をつぶる。幼い私にはそれが何か悪い事言った様に思えて仕方なかったが、母にも幼稚園の先生にも「嘘はいけない事」と教わっていたから、雪が降ってないのに「雪が降ってるよ」とはなかなか言えなかった。当時住んでた所は冬でも殆ど雪が降らない。祖母が亡くなるまで雪は遂に一度も降らなかった。

そうして祖母は家で医者と家族に看取られて亡くなったのだが、祖母が臨終の間際に「雪は(降ってるか)?」と聞いてきた。私はもうあの祖母の悲しそうな顔を見たくなくてつい「(雪が)降ってるよ」と答えた。それを聞いた祖母は微笑を浮かべ安らかな顔で逝った。(後になって分かったのだが、祖母と祖父の初めての出会いは雪降る中で、祖父が亡くなった日は雪が降っていた。祖母にとって「雪」は祖父に繋がる特別な物だったようだ)

祖母の葬式後、母の私に対する態度がガラッと変わった。何かと私を「大嘘付きの悪ガキ」扱い「私子は悪い子だから」と私の欲しい物したい事全て却下された。その上母は私の友達や近所に「うちの子は嘘つきで困る」と触れ回り、私は友達全部を失い苛められるようになった。それを見て母は「罰が当たった」と言うだけで何も動いてくれなかった。父は仕事人間で家の事には全く無関心。中学卒業するまで本当毎日が地獄だった。

中学卒業して間もなく(高校は一応入学予定だったけど)ここに居ては何も解決しないと決心し家出。当てもなく彷徨った。そしてとあるお寺の境内で野宿してたらそこのお坊さんに拾われた。
お坊さんは祖母の臨終時の話、その後の母からの手酷い扱い、学校での苛めなど私の過去の話を全て聞いてくれた。そして私が「私は嘘つきだから罰が当たったんですか?」と聞いたらお坊さんは「それは嘘じゃない、方便だ。あなたのその一言でお祖母さんは安らかに冥土に旅立てた。お祖母さんはお祖父さんとあの世で再会なされただろう。あなたの言った事は決して悪い事では無い。仏様はちゃんと見ておられる」この話で私は救われた。それまで心のどこかに「私は嘘付いたからこうなったんだ」と言う諦めに似た気持ちがあったのが消滅した。

お坊さんがいろいろ動いてくれて私はある会社に住み込みで働く事になった。そこの社長さんは私を夜間高校に通わせてくれて高卒扱いになり、一人で何とか食べて行けるようになった。今もそこで働いている。

両親とはその後一度も会っていないし連絡も取ってない。私を拾った時あのお坊さんが両親に一度連絡したそうだが、親は私の事なんかもうどうでも良かったらしく「そっちで好きにして」と言ってたらしい。お坊さんは呆れてた。

今思えば当時の母は相当追い詰められていたんだろう。もしかしたら私の見て無い所で母は祖母にいびられてたのかも知れない。家庭を一切顧みない父にも絶望してただろう。そこに祖母の介護を丸投げさせられて、母には相当恨み辛みが溜まってたと思う。当時は離婚女性には世間の目は冷たい時代だったし、何一つ資格の無い専業主婦の母は一人で生活していくのはかなり困難。それで嫌でも父にすがるしかなかったんだろうな。

多分母は祖母が苦しんでシぬ事を願ってた。でも私が余計な事言って祖母を安らかに逝かせてしまった。それで私にそれまでの恨みをぶつけたんだと思う。母の気持ちは分かるが、私としてはたまったものではない。そこまでするならコろしてくれた方がまだマシだった。あの10年間は今思い出しても辛すぎた。運よく親切なお坊さんや社長さんに出会えたから今も私は生きてるけど、中卒の家出娘なんて普通更なる悲惨な運命を辿って無縁仏になるのは目に見えてる。

多分両親は年齢から言って既に故人となってるだろう。閻魔さまはどう両親をお裁きになったのか。そのうち私も逝くだろうから聞いてみたい。

 

「愛のコメント」

辛く大変な時代があったんですね。

 

-修羅場
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